69話   運命の誘い  作者べりやん

 














夜、電話とにらめっこしている男がいた








ピッ、ピッ、ピッ・・・・・








真中「ああ〜!ダメだ!どうしても最後の番号が押せない・・・」






ベットにゴロンッと寝転がる






胸に手を置くと、いつもより力強く鳴っている








ドクンッドクンッ









目をつむり、大きく深呼吸して再度電話と勝負する










ピッピッピッ・・・・・・・















唯「じゅんぺー!」






真中「うわぁっ!!」







突然の唯の声に驚き、電話を慌てて切る








真中「な、なんだよ!」




唯「なんだよって明日唯早いってさっき言ったでしょ?」




真中「ああ。聞いたけど・・・・」




唯「だからもう寝るの!ほら!電話するなら外にでも行ってしてきなよ!」










真中(外か〜それなら誰にも邪魔されないな)







真中「わかったよ。じゃ、おやすみ」







真中は部屋を出て、電気を消した















真中「ちょっと出かけてくる」









そう言い、携帯片手に出て行った








真中(さて・・・・・どこで電話するかな〜?)












家の前で電話してて、隣の住人に会ったら妙に気まずい



だからと言って最適な電話をする場所がない



誰も邪魔されない、静かな場所がいい











とりあえず真中は歩き出した









真中(ん〜・・・公園がいいんだけど、この時間帯はカップルがな〜・・)









ボーーッと歩き続ける


















真中(・・・・・・あれ?ここは・・・・)







びっくりして周りを再度見渡した










真中「ここ・・・・西野ん家の通りじゃん・・・・」










戸惑う







もう少し行けばつかさの家が見えるのだ












真中(・・・・・この際、西野の家に行って言うか?









             いや・・・・そんな遊ぶ用事を家まで言いにいってもな・・・・) 














自分の考えに呆れる













真中(・・・・・もう、ここで電話するか)









ポケットから携帯を出す







携帯は家の電話と違い、ダイヤルを押さなくても名前を選んで1つボタンを押せばかかるのだ




真中の携帯画面は『西野つかさ』で止まっていた










真中(・・・・・押せばつながるんだよな・・・・いざ電話するとなるとやっぱドキドキする・・・・)









手に汗が滲み出てきたような気がする












真中(ええい!!かけるぞ!!)











ピッ












・・・・・・・プルプル、プルプルプル───










ピッ











つかさ『もしもし淳平君?どうしたの?』









ドキッ








久しぶりに聞くつかさの声に懐かしみを感じ、緊張感も走る









真中「あ・・・・ひ、久しぶり。元気?」






声が裏返る








つかさ『うん。元気だよ淳平君は?』




真中「俺はもちろん元気だよ!」




つかさ『あはは。元気そうだね〜あたし今バイトの帰りなんだ〜っで淳平君なに?』




真中「あ、実はさ・・・・・」




つかさ『うん』








自分の心臓の音が電話相手のつかさまで聞こえるんじゃないかって思うほど大きくなっていた















真中「あ、明後日暇・・・?」




つかさ『明後日?別に暇だよ』







真中「よ、よかったらさ・・・・その日花火大会があるんだ。俺と一緒に行かない・・・・?」












大事な誘い





この時を逃したら次はいつ君に伝えるチャンスが来るのだろう




早く、君にこの思いを伝えたい










つかさ『花火大会あるんだ〜楽しそうだね。もちろん行くよ』






真中の声のトーンが先ほどより上る








真中「まじで!よかった〜・・・・」





つかさ『?何そんなに安心してるの?』




真中「い、いや!こっちの話!」




つかさ『あはは。まぁ、聞かないでおいてあげる。花火大会何時くらいから行くの?』






真中『そうだな〜花火は9時からなんだ



           でも、屋台とかは早めに出てるしちょっと早めに行ってブラブラしたいよな』









つかさ『そうだね〜久しぶりのデートだし』






真中『え、ええ!?で・・・・デート!?』





つかさ『だってそうだろ〜?2人っきりなんだし』








電話だが、なんとなく西野は笑っているだろうなって思った








真中「ああ・・・・デート・・・ね」








顔が赤くなっているのがわかる








つかさ『む〜?あたしとのデートが嫌なの〜?』




真中「そっ、そんなことないよ!」






慌てて言う自分になんだか照れる










つかさ『あはは。それじゃあ、早めに行ってブラブラしようね』





真中「ああ。西野何時くらいがいい?」




つかさ『ん〜そうだな。6時半でいいかな?』





真中「わかった。明後日そのくらいに迎えに行くよ」





つかさ『うん。楽しみにしてるね』









嬉しそうなつかさの声を聞いて真中の心は幸せに満ちていた








ブルンッ ブルブルブルブルブル!!!













真中「うわぁ!」







真中の横を数台のバイクが通り抜けた












真中「あっぶねーな〜」






つかさ『どうしたの?車か何かの音したけど・・・・』





真中「バイクだよ。いきなり横を走り去っていったから驚いた〜」




つかさ『あれ?もしかして淳平君外で電話してたりする?』




真中「うん。そうだけど?」





つかさ『・・・・・・・・・・・あははははは』





真中「?西野何がおかしいんだ?」





つかさ『もうちょっとしたら教えてあげる』






真中「?」



























つかさ「淳平君」









さっきまで聞いていたつかさの声






だけど、今までと違うのは











その声は携帯からではなく、真中の後ろから聞こえてきた









慌てて振り返る












真中「に・・・・西野」









携帯電話を耳にあて、少し笑いながらこっちを見ている




久しぶりに見たつかさが笑顔だったので落ち着いていた心臓がまた大きくなる







携帯を切った












つかさ「こんなところで何してるのかな?」




真中「え・・・・え〜っと・・・・」





上手い言い訳が思いつかない









真中「さ、散歩だよ!ほら、ウォーキングウォーキング!」




つかさ「ふーん。淳平君ウォーキングするほど太ってるように見えないけどな〜」




真中「あ、あはははは・・・・・」




つかさ「あれ?淳平君また身長伸びた?」




真中「え?そうかな?自分じゃあんまりわからないや」




つかさ「絶対伸びたよ!だってほら」









スッ










つかさ「この前より目の位置が高くなってるよ」








すぐ目の前に立つつかさ




上目使いで見られる自分




心臓の音が速まる









真中「あ、あははは・・・」





つかさ「あ、いけない。早く帰らないと。淳平君おやすみ」




真中「あ、お、おやすみ!」







つかさは笑顔で走っていった







が、途中で止まって振り向いた











つかさ「明後日楽しみにしてるからね!遅れて来たら承知しないぞ!」





真中「ああ!俺も楽しみにしてる!遅れなんてしないよ!」







つかさはにっこり笑った後、また走っていった









真中はそんなつかさの後姿を消えるまで見つめていた