共に歩く ─6─
慎二が立ち去った後、だんだんと空が朱色に変わっていく様を眺めていた
グランドから聞こえてくる声もいつの間にか消えている
そのおかげか、やたらと気持ちは落ち着いていた
先ほどのやり取りを思い出し、一人苦笑いを零す
「俺と遠坂は似合わない・・・・・か」
言葉にしてみると、わかっていたことなのに寂しく感じた
・・・・・・そろそろ帰るか
もたれていたフェンスに別れを告げ、階段を降りて行く
靴を履き替え、少し歩くと夕暮れを背に1人の女の子が立っていた
「士郎」
女の子は俺を名前で呼ぶ。この学校内でそう呼ぶのは1人しか居ない
俺は返事をする代わりに彼女の側に寄り、軽く手を上げた
夕日が少し眩しい
正門から見える夕日は海に沈もうとしていて綺麗だった
「遅い」
でもそれ以上に、遠坂の笑顔が輝いていた
その姿を見て、今日、慎二に伝えた事は間違いじゃないと思った
あそこで嘘をついてしまっていたら
きっと、こんな穏やかな気持ちで遠坂と向き合えなかったから
「待っててくれたのか?」
「屋上に居たのが見えたから暇だから待ってあげてただけ」
暇だからをやたらと強調させる
「それに今日も家行くって言ったでしょ?」
「そうだな。よし、桜もセイバーも待ってるだろうし早く帰るか」
昨日は桜に作ってもらったので今日は俺が作ることにした
そして今日も遠坂は藤ねえ達と一緒に帰らず、テレビを見ている
しかし、今日は特別番組なんてものはなくて、先ほどからチャンネルをころころと変えたりしてるだけだ
──時計は9時を過ぎた
だが遠坂は帰る気配を見せない。何か見たいテレビでもあるのだろうかと新聞紙を広げる
「シロウ、先にお風呂に入りますね」
横に座っていたセイバーが自室へと迎い、それを合図にと遠坂は立ち上がった
送ろうと俺も立ち上がる
「泊まるわ」
「そうか。なら送ろう」
てくてくと玄関に向かう
「・・・・ん?」
泊まる?
「どこ行くの?」
「え?」
遠坂は玄関とは別の客室があるところに足が向いている
「と、泊まるぅぅ!?」
「何よ大きな声出して」
「何考えてるんだお前はっ!」
「何って今から士郎の魔術を見てあげるんじゃない」
さぞ当たり前かのように遠坂は言った
「久しぶりだからとことん見てあげるわ。それなら帰り遅くなるし泊まるのが妥当でしょ?」
確かに魔術を見てくれるのはありがたいが
「ほら、難しい事考えないで行くわよ」
そのまま遠坂は鞄を持って部屋へ向かう
久しぶりに見てもらうんだ
余計な事なぞ考えず、気合を入れて取り掛かろう
「....はぁ」
なぜか頭を抱えている遠坂
「士郎ってほんっとうに投影以外才能ないのね」
「む。仕方ないだろ。それしか出来なかったんだから」
「不思議よね。固有結界まで出来るのになんでだろう」
じろじろと上から下まで見られる
「だからそれを教えてくれるんだろ?」
「ええ。そうね、じゃまずは・・・・」
ガサゴソと鞄を漁り、出てきたのは赤いドロップ・・・・なんかじゃなくて見覚えのある宝石だった
「・・・・」
「飲んで」
断れない悪魔の微笑がそこにはあった
それを飲み込んだ俺は、まるで40度の熱が出たかと思うほど体が熱くなり
遠坂に何を教えてもらったから定まらないまま自室の布団に飛び込んだ
「普通なら3日くらいかかるけど士郎なら明日中には治ってるわよ」
送ってくれた遠坂が布団をかけなおしながら言う
「・・・・それはどこ調べだ」
「遠坂調べよ」
・・・・・。
「そうか。なら信じる。おやすみ」
そのまま深い眠りへと落ちていった
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